実は、私はすでに丹波篠山に移住しているのですが、まだまだ知らない丹波篠山を知りたい、いろいろな方々とつながりたい、という想いから、このツアーに参加させていただきました。ツアーに参加してよかったことは、大きく2つあります。一つは、とても魅力的な方々と出会えたことです。運営されている方々も、参加者のみなさまも、そしてプログラムの中で出会った地域にお住まいの方々も、とても個性的で温かな方ばかりで、生き方に刺激を受けたり、ツアー終了後もつながる出会いになったりしました。
もう一つは、丹波篠山の多様な楽しみ方を知れたということです。それは、ツアーのコンテンツが充実していただけでなく、途中参加・離脱が自由にできたことで、個々の興味や関心に合わせて日程が組めたことによります。クロモジのアロマのこと、丹波篠山にある有名なアルプスや山登りのこと、子ども向け施設のことなどは、ツアー参加者を通じて知りました。 ここでは、ツアーの内容や魅力を時系列にご紹介します。途中参加のため、一部レポートになりますが、感動やワクワクが少しでも伝わると嬉しいです。
■参加者・スタッフでの夕食交流会@うめたんFUJI
ツアーの運営スタッフである梅谷さん手作りのおいしいごはんが食べられるということで、何としても参加したいと予定を調整しました。山の芋や鹿肉、猪肉など丹波篠山の食材をふんだんに使ったお料理。鹿肉一つとっても、ローストしたものを生春巻きにしたり、串カツにしたり、とレパートリーが豊富で、また、メインであるぼたん鍋は、丹波篠山で一般的な栗味噌仕立てではなく、澄ましのお出汁で、オリジナリティに溢れていると同時にとてもおいしくて感動しました。
ここでは、もう一つ大きなイベントがあって、それは「デカンショ節」という丹波篠山に伝わる伝統的な歌と踊りを「デカンショ節保存会」の方々が披露してくださったことです。私が丹波篠山に移住してからは、コロナの影響でデカンショ祭りが開催できておらず、踊りを覚える機会も生で見る機会もなかったのでとても嬉しかったです。中でも、丹波篠山出身の若い方が保存会に入られて、迫力のあるエネルギッシュな歌を披露されているのを見て、かっこいいと思いました。
私にとっては、この夕食交流会の場がみなさまとの「初めまして」の場になったのですが、みなさま気さくな方で、どなたとお話しても話が盛り上がってとても楽しかったです。このツアーに参加したきっかけから目的、今のご活動やご関心、高校生から70代まで、これだけ多様な方々が集まる機会というのはなかなかなく、貴重だと感じました。
ゲストハウス「やまぼうし」というこれまた素敵なお宿で、ゆっくり寝ました。
■今田・立杭の散策、そして陶芸体験
丹波篠山市の西の端、今田という地区にある兵庫県立陶芸美術館や「陶の郷」という陶芸にまつわる施設を周りました。いずれも何度か訪れたことのある場所でしたが、今井さん(観光協会所属)の解説のおかげで、新たな発見や学びがたくさんありました。特に、窯元さんによって作風の様々な丹波焼で、お皿そのものを見て「これは○○窯さんの器ですね」と言えるのはすごいなと感心しました。丹波篠山の特産物は一つひとつが本当に奥深くて、勉強してもしきることはないと感じました。
昼食は自由だったため、参加者の方と一緒におそばを食べに行きました。いくつか選択肢をご提示くださったうえで、たっぷりとお昼の時間があって好きなところに行ける、というのは素敵だなと思いました。
午後は、陶芸体験をしました。豪人窯という窯元さんのところで体験をさせていただけるということだったのですが、着いてびっくり、とても小綺麗でかわいい店構えでした。「豪人窯」という名前から勝手にいかつい雰囲気を想像してしまっていたようです(笑)。参加者と豪人さん、お互いに自己紹介をしつつ、これまでの経緯や移住してみてのご感想などをお話しいただきました。丹波篠山での暮らし、あるいは地方移住に関して、「良いことばかりではない」、大変なことや面倒に感じることもあるというお話が、少し意外に感じられながらも、そうだよなーと納得したり共感したりできて、また、豪人さんの話しぶりもコミカルで、とてもおもしろかったです。他の参加者の方からも、ただ良い面だけを聞くよりもリアルに触れられてよかった、という声があり、大変貴重な場だったと感じました。
作品に関しては、三者三様で、個性豊かな作品が生まれて感動しました。自分自身は、何を作ったのか記憶が定かでないほど、再三迷ったり途中で壊して作り直したりしたのですが、その分どんな仕上がりで届くのか楽しみです!(笑)
この日は早めに、15時半ごろ解散しました。夕方、「明日の朝、雲海を見に行く人は05:45に集合しましょう」というライン。あまりの朝早さに少し迷いましたが、こんなことでもなければ登らない、と参加を決めました。しっかり寒さ対策していきます。
■高城山の登山(雲海)
まだ暗い中での集合、顔もおぼろげに見えるくらいでしたが、予想以上にたくさんの人が集まっていました。運営の方はカイロや懐中電灯をご準備くださり、また、頂上では紅茶やコーヒーなどもくださって、本当に至れり尽くせりでした。
寒いとはいえ、前後数日間と比べると冷え込みのゆるい日でした。歩き出せば暖かくなり、気がつけば空も明るくなっていきます。しかし、霧はうっすら…雲海は見られないかもしれないねと話していました。30分ほどで頂上へ、あけぼのの澄んだ空気の中、うっすらと霧がかった丹波篠山のまちが見下ろせました。たった少し登っただけでこんな景色が見られるのかと感動しました。しかし、それで終わりではなかったのです。景色を眺め、コーヒーを飲んだりチョコレートを食べたり、写真を撮ったり日の出を拝んだりしているうちに、みるみる霧が濃くなってゆくのです。
自分たちのいる高城山が影となって雲に映っています。ねらっても見られないほどの絶景に出会えたこと、みんなと一緒にこの感動を共有できたことが何よりもの喜びでした。
■りょうり舎やまゆ
丹波篠山の旬の食材を使った手の込んだお料理。この日のメインは丹波豚のハンバーグでした。どんぶりいっぱいの山の芋のとろろを、ごはんにかけていただいたのが何とも贅沢でした。この場には、市長も来られていて、参加者は一言ずつ感想を述べました。濃密な時間を過ごしているツアーですが、人それぞれ印象に残っていることは違っていて、感想を聞くのも楽しかったです。
■吉良農園
午後は、吉良農園の見学でした。少しばかり畑作業や農業に携わっている身としては、あれだけの面積を多品種でされている、そのうえ草マルチや里山整備など、幅広い資源の活用、循環に取り組まれているというのは、本当にすごいことだと、頭の上がらない思いでした。また、この日は、里山整備の一環で木を切るところを見せてくださいました。見た目はそれほど太くない木でしたが、倒れたときの音、重み、すごい迫力でした。枝のつき方、傾き具合などを見極めて、しっかりと安全を考慮して、切れ込みの向きや深さを定める頭脳戦、考えた通りに再現する技術力、すごく奥の深い匠の技だと思いました。
その後、スクリーンとプロジェクターを使って、生態系を維持する農業のあり方や、農地面積や経営規模の分布、今後取り組みたい課題や実現したい未来などについてお話しいただきました。特に、農家の収入状況などは衝撃的な数字であり、いかに厳しい現状かということと、いかに自分が無知であるかということを突きつけられました。このように、マクロな視点で農業界全体の話を聞ける機会というのもなかなかないので、とても勉強になりました。また、何か明確な答えが出ているわけではなく、これから一緒に考えていきましょうと呼びかけてくださったので、こうして人の交流や価値の交換が生まれていくきっかけになるといいなと思いました。
天気が下り坂だったこともあり、とても冷えていました。今田地区にある温泉施設「今田ぬくもりの郷」でゆっくりしていると、他の参加者やスタッフさんと一緒になり、その後みんなで楽しくおしゃべりをしながら食事ができたのも良い時間でした。
■料理体験
「カフェ アーボ」という、隠れ家的な、しかし地元のお客さんでいつも賑わっているお店の方が先生になってくださるということで、とても楽しみにしていました。メニューはなんと、グリーンカレー。「カレーというのはね、どうやってもいいんです」なるほど、それなら家でもできるかもしれない、と思いながら全体の手順を聞いていると、トッピングの多さに驚いてしまいました。山の芋の素揚げに、ピクルス、ゆで卵、黒豆、ナッツ、柿、キウイまで、本当になんでもいいのだと感じました。ツアー5日目ともなると参加者同士もお互いのことがよく分かっていて、手早く分担、楽しくおしゃべりしているうちにあっという間に出来上がりました。おもしろかったのは、チームごとに味が全く異なっていたことです。同じ材料で作ったはずなのに、切り方や火の通し具合、スパイスの分量などにより、それぞれに特徴のある仕上がりになりました。もちろんどれも絶品でした。
こうして、『丹波篠山里山暮らし5日間~人とつながる旅~』は終了しました。ここでの経験や訪れた場所が糧となったことはもちろんですが、このツアーを通じて出会った方々とその後もつながることができて、タイトル通りの旅だったなと実感しています。すてきな案内人がいてこその丹波篠山の魅力を、ぜひ味わってみてください。