◆施設概要/丹波篠山市立 歴史美術館
篠山裁判所は、篠山藩庁の建物を使用して明治3年(1870)に発足しました。明治23年(1890)民・刑事の一審のみを 取り扱う地方裁判所になりました。翌年、当地に新しい庁舎が建築され、昭和56年(1981)6月まで使用されていました。
当時、木造建築の裁判所としては我が国最古級のもので、重要建造物として昭和57年(1982)3月20日に 町文化財として指定されました。この建物は、中央に玄関車寄を置いて全面左右に法廷を配したE字型で、 内部はほとんど装飾がなく、簡素でありながら重厚さをかもし出すよう随所に工夫がこらされています。
この裁判所の外観及び旧法廷を曳家工法で建物の向きを90度回転させた上で従来の姿を残し、 美術館にふさわしく内部を改装し、昭和57年(1982)4月に開館しました。
※下記展示内容は「特別展」開催中に変更がある場合があります。
◆古代/埋蔵資料
古代のロマンを物語る埋蔵文化財
風土記の昔から拓けた、この地方は「雲部車塚古墳」と呼ばれる前方後円墳をはじめ、 住居跡、寺院跡など多くの遺跡が散在し、それらから発掘された埋蔵文化財は作製技術とともに、 当時の生活文化の高さを物語っています。
展示 / 漢式鏡・鏡板・環鈴(県指定文化財)
漢式鏡は直径20㎝の三角縁神獣鏡で、飛禽走獣文と方格半円帯の中に神仙と霊獣を配した、 いわゆる三角縁画文帯対置式神獣鏡です。鏡板は装飾に5個の鈴を付けた轡の一部で、環鈴とともに 古代の馬具の一種であり、古墳時代中期から後期(5~6世紀)にかけて古墳に盛んに副葬されたものです。
漢式鏡
鏡板
環鈴
鏡板
展示 / 七鈴鏡 (県指定文化財)
上宿の宝地山古墳群のうちの2号墳から出土したもので、 直径16.9㎝、縁に7個の鈴が付いていることから七鈴鏡と呼ばれています。兵庫県下では出土例がなく、 全国的にも数例が知られるのみです。宝地山2号墳は古墳時代後期(5世紀末~6世紀)の築造であり、 当地域の古代史を解明する手がかりとして極めて重要な資料と考えられまする。
◆中世-丹波古陶 など
日本六古窯の「丹波焼」をはじめとする中世篠山を語る史料群
日本六古窯のひとつである丹波焼は鎌倉時代初め頃に創窯したとされ、その後およそ800年間にわたり連綿と生産が続けられてきています。この間、窯場は今田町四斗谷川流域の三本峠、釜屋、下立杭、上立杭を時代ごとに場所を移しながら築かれ、その数は知られるだけで33ヶ所を数えます。
丹波篠山市は、こういった窯跡の将来的な保存を検討するための資料を得るため、三本峠北窯(さんぼんとうげ きたがま)跡(平成11年度)と下立杭古窯(しもたちくいふるがま)跡(平成15年度)の範囲確認調査を行い、 その調査の時に発掘した遺物を展示しています。
展示 / 三本峠北窯の碗 (鎌倉時代初期・13世紀前半代)
①三本峠北窯は丹波焼創業期の窯跡であり、これまでに確認されている窯跡の中では最古級のものです。 当窯跡から出土した遺物は、丹波焼草創期の製品ということになり、いうならば「丹波焼のルーツ」と 位置付けられます。
②三本峠北窯の遺物は、過去に灰原の調査によって確認されていましたが、丹波焼草創期窯跡本体内部から出土した 完形遺物として希少なものです。
◆近世1/武具・美術品
城下町を偲ぶ武具、美術工芸品の数々
武具は、刀剣、甲冑をはじめ旗指物、馬具、指揮具、鉄砲など多種多様です。刀剣は、武家にとって筆頭道具であり、古来より最も重要な武具として取り扱われてきました。そして、誕生、元服、家督など祝い事の引き出物として武家の間で欠くことのできない最高位に位置する武具として扱われてきました。
刀剣は、わが国が世界に誇りうる工芸美術品として、その美しさが称賛されています。
甲冑は、身に纏う防具であり、金工、織り、染め、塗りなどの最高技術を駆使した華麗さと威厳を兼ね備えた道具といえるでしょう。
甲冑は源平時代から室町時代にかけて製作された大袖を完備した華麗な大鎧。また室町時代を中心に流行した大鎧の華麗さを残しながら機動性を兼備した胴丸鎧や腹巻。室町時代の後期、鉄砲伝来とともに装飾性から実用、実戦向きに仕立てられた当世具足があります。しかし、 寛永16年(1639)島原の乱を最後に日本各地での戦が終結すると太平の時代を迎え、甲冑は実用、実戦向きから華麗な装飾が加えられた象徴的なものとなりました。 江戸時代後期、洋式兵法の導入により甲冑は武家文化の遺産としての存在にすぎなくなってしまいました。
当館では新刀(近世に制作された刀)を中心に、篠山の刀匠がつくりあげた刀剣を展示しております。甲冑は篠山藩主青山家ゆかりの具足、さらに工芸の粋を集めた具足や武具を公開いたします。
展示 / 東海道・中仙道・甲州街道図屏風
江戸から大津までの宿場町の様子、お城及び名所等が描かれており、関が原の合戦布陣図が 赤丸・黒丸で描かれており、一際大きな赤丸は家康がいた「御本陣」と記されています。
品川宿付近の川に描かれている橋「六江」は、江戸初期までしか架かっておらず、それ以降は人足渡しとなっています。 また、他の宿場にある「本陣」が「御殿」と称されて記されていますが、「御殿」との呼び方は、 約1670年までとされていることからこの屏風がそれ以前に描かれた可能性が高いと考えられます。
展示 / 源氏物語絵巻 六巻 (市指定文化財)
源氏物語中、最も名文であるとされている須磨・明石の巻を後世に残すため、篠山藩第12代藩主青山忠裕(1785~1835)がお抱えの狩野派絵師栄保典繁らに描かせた絵巻です。江戸期に画かれた源氏物語中、 須磨・明石の巻の絵巻は全国的に少なく人物や風景が細密に描かれた逸品です。
須磨巻:三巻・明石巻:三巻の 計六巻
◆近世2/藩窯王地山焼
幻の陶磁器ともいわれる王地山焼の逸品を展示
王地山焼は、江戸時代後期、市内河原町王地山の麓の王地山陶器所において、青磁、染付け、赤絵といった 磁器として焼かれた陶磁器です。
王地山焼の技術は、肥前系の技術を基礎に京都の陶工で人形師でもあった欽古堂亀祐(1756~1837)により伝播した型を 中心とする成型技術の影響を大きく受け、亀祐の在銘品が多数残されています。また、そうした技術を受け継ぎ 柳亀堂亀七、王地山曉雲亭など地元陶工により数々の名品が生み出されました。しかし、安政年間に入ると窯の運営も 芳しくなく、休窯をすることも多くなり、廃藩置県(1869)を目前に窯を閉じることとなります。本館においては、 王地山焼の前身ともいえる極短期間しか焼かれていなかった古市焼(篠山市古市)の展示も併せて行い、 江戸時代の御庭焼の歴史と工芸美術を学び楽しんでいただけるよう展示公開を行っております。
みどころ
王地山焼は、青磁と染付だけで9割近くを占めますが、赤絵や褐釉のものも少数ながら作成されています。
当時、12座の登窯で焼成を行っていたことが解っていますが、青磁の発色にはかなり苦心したようです。 また、染付については、当時の肥前や京都に劣らない軽やかで深い色合いをもつ呉須の発色に成功しています。
こうした技術水準の高い焼物を生み出すためには、材料の選択、釉薬の調合、窯の焚き方など、 欽古堂亀祐の指導なくしては考えられなかったでしょう。
展示 / 青磁鶴蓋物・染付鶴蓋物
この青磁と染付の蓋物は、同一の型を使用して作成されたものです。当時の王地山焼ではこうした同一の型により 成型したものを青磁、白磁、染付、赤絵などのさまざまな技法で焼き上げています。
展示 / 青磁亀甲唐草透六角燈籠(市指定文化財)
この燈籠は、傘、胴、足と別々に型で作り、それを継ぎ合わせて釣燈籠にしています。 また、前面に施された深浅の彫文様、側面に交互に透かし彫りされた亀甲文と唐草文、 薄淡く焼きあがった青磁釉など洗練された技術を伝える逸品です。
◆近代/旧法廷展示
日本最古級の法廷空間を体感ください
明治新政府が西南の役を鎮圧した明治10年(1877)、旧豊岡県支庁跡にて篠山区裁判所が設置されました。 その後、明治23年(1891)に府県制・郡制公布がされると同時に、区裁判所は地方裁判所となり、翌24年に 新しい木造の庁舎が完成して移転しました。
現在、本館として使用されているのはこの建物で、 裁判所の木造庁舎としては最古級のものといわれています。
建設当時の姿は、瓦をのせた白壁の塀で取り囲まれた敷地の南に開く正門を入ると、左手に執行吏役場、 右手に公衆控所があり、正面に両翼を広げた長さ約40mの木造平屋建ての本館が控える堂々たる構えのものでした。
裁判所の中心となる法廷は、凝った装飾もないシンプルな構造で、廊下を背にして裁判官席、一段下がって検事席、 弁護人席、証言台、傍聴席がありました。平成6年(1994)に放送されたテレビドラマ「裸の大将・丹波篠山編」の 法廷シーンは、この法廷で撮影されたものでした。
昭和57年(1982)に鉄筋コンクリート造の新庁舎ができるまで、明治・大正・昭和の90余年もの間、現役の 裁判所として使用されてきました。その後、都市計画道路が裁判所敷地を南北に貫通することになり、裁判所本館は 東側の残地に移築して資料館として保存再生されることが決定されました。その結果、これまで南面して建っていた 本館は90度回転して西向きとなり、正門は東へ曳家されて現在地に移され、道路を挟んで残った西側の旧敷地は駐車場として利用されています。
裁判官体験コーナー
旧法廷において、明治時代の裁判官になれる「裁判官体験コーナー」を設置。 明治時代の裁判官の衣装と帽子を着て写真撮影ができます。
旧篠山地方裁判所間取り図
◆ご利用案内
基本情報
住所 | 兵庫県丹波篠山市呉服町53 |
電話 | TEL:079-552-0601 FAX:079-552-6618 |
開館時間 | 9:00~17:00 ※受付終了 16:30 |
休館日 | 毎週月曜日 年末年始(12月25日~翌年1月1日) ※祝祭日は開館、翌日休館 |
駐車場 | 有 |
歴史美術館 入館料 | 大人:300円 / 高校・大学生:200円 / 小・中学生:100円 |
歴史4館 共通入館券 | 大人:600円 / 高校・大学生:300円 / 小・中学生:150円 ※共通券は2日間有効。 ただし2日目が休館日の場合は当日のみ有効。 ※歴史美術館が特別展期間中は、4館共通券の料金が異なる場合があります。 |
30名以上 団体割引 | 大人:250円 / 高校・大学生:150円 / 小・中学生:50円 ※お決まりの場合、お手数ですが、ご予約をお願いいたします。 ※必要に応じて展示解説や質問への対応をさせていただきます。 |
入館無料対象 | ①身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方 ②保護者同伴の6歳未満のお子様 ③「ひょうごっこココロンカード」「のびのびパスポート」をお持ちの方 ④日本博物館協会会員証をお持ちの方 ⑤「ひょうごカルチャーパス」をお持ちの方 |
館内ガイド | 必要に応じて展示解説や質問への対応をさせていただきます。 ※事前予約要 |
学校関係者の方へ
丹波篠山の歴史を一挙に学べる篠山城大書院・青山歴史村・武家屋敷安間家史料館・歴史美術館は 班別ウォークラリーに適しており、近年、阪神圏の多くの学校に利用していただいています。
※校外学習でのご入館は、お手数ですが、かならずご予約をお願いいたします。
※必要に応じて展示解説や質問への対応をさせていただきます。
※見学準備や事前・事後の学習に役立つ情報提供、さまざまなご相談もできる限り対応いたします。
◆交通手段/地図
●鉄道・バス
JR福知山線「篠山口駅」から神姫グリーンバス篠山営業所行「春日神社前」バス停下車 徒歩1分
●自動車
舞鶴若狭自動車道「丹南篠山口I.C.」から東へ約10分